あらすじ
婚約破棄、断罪、辺境追放。——けれど令嬢は、泣きも喚きもせず、ただ一礼して大広間を去った。
公爵令嬢ヴィルヘルマ・フォン・ヴァイセンフェルスは、王太子に婚約を破棄され、何も生まない捨て領地グレナディアへ追放される。誰もが彼女の悲鳴を待った。だが彼女は、宣告の前と寸分変わらぬ姿で立ち、静かに礼をして去っていく。置いていかれたのは、踊り場の上の王太子のほうだった。
送られた先の山には、誰も見向きもしない赤い石が眠っていた。中央の常識では「軟らかく、武具には使えぬ」とされる石。けれど彼女は知っている——柘榴石《ガーネット》は、硬度では劣り、決して砕けないのだと。
捨てられた石。捨てられた土地。捨てられた令嬢。
その三つで、彼女は前代未聞の兵器を組み上げる。宝石装甲の戦車——《ガーネットチャリオット》。
完璧と謳われた令嬢教育は、その実、軍事教育だった。
帳簿も、鉱脈も、戦列も、彼女の手の中で意味を変えていく。やがて王都に迫る大軍の前に、暗紅の戦車隊が音もなく現れ——
「最高のデビュタントに、いたしましょう!」
社交界を追われた令嬢が、戦場を主戦場に選び直す。悪役令嬢×軍記ファンタジー。
そして——彼女を辺境へ送った父の真意を、まだ誰も知らない。