あらすじ
「百戦錬磨の恋の達人」——ただし、交際経験は一度もありません。
恋愛ドラマで人気を博す放送作家・花手美堀、四十二歳。自分の容姿に自信がなく、誰かと暮らす未来を半ば諦めていた彼女は、ひとりのクリスマスイブ、行きつけのバーで寂しそうな少女・ミユと出会う。
やがて迎えに現れた母親の基子は、傷だらけで、靴も片方なくしていた。夫の暴力から逃れ、今夜の居場所さえない母娘に、美堀は思わず申し出る。
「よければ、うちで泊まりませんか?」
二本増えた歯ブラシ。三人で包む餃子。帰る時間を尋ねてくれる声。
不器用な共同生活のなか、気丈な基子の素顔に、美堀は生まれて初めて、恋を言葉にしたくなる。
けれど、ミユにも譲れない気持ちがあった。
「ママより先に、好きって言ったのに」
大人の初恋と、少女の初恋。そして、もう大切な人に置いていかれたくないという願い。
それぞれの「好き」を抱えた三人が、食卓を囲みながら、自分たちの家族の形を見つけていく。
クリスマスイブから始まる、優しくもほろ苦い、大人の百合と家族の物語。