あらすじ
私は、可愛いとは無縁の女だと思っていた。
ヴァレンティア家に生まれ、幼い頃から剣を握って育った私は、誰よりも強くなることを目指してきた。
父も、兄たちも、皆が立派な騎士だった。
だから私も、大切な人を守れる強い騎士になりたかった。
けれど、成長するにつれて周囲から向けられる言葉は決まっていた。
――格好いい。
――凛々しい。
――美しい。
――まるで氷のような女だ。
「可愛い」と言われた記憶は、ほとんどない。
いつしか私は、それでいいのだと思うようになった。
強ければいい。
頼られる存在であればいい。
弱さを見せず、誰にも迷惑をかけなければいい。
そうして私は、王国騎士団第三騎士団長となった。
部下から恐れられるほど厳しく、自分自身にも厳しく。
けれど――そんな私にも、密かに心を許している部下がいた。
明るくて、素直で、少し騒がしくて。
失敗しても何度でも立ち上がる、不思議な青年。
レオン。
最初は、ただの不器用な新人騎士だった。
けれど、どれだけ叱ってもめげず、どれだけ失敗しても諦めず、いつも真っ直ぐな瞳で私を見つめてくる。
「団長みたいな騎士になるのが、俺の目標です!」
そう言って笑う彼を見ていると、不思議と心が温かくなった。
私は知らなかった。
彼が私のことを、ずっと特別な目で見ていたことも。
私自身が、少しずつ彼を特別な存在として意識していたことも。