あらすじ
人には、魔力を持つ者と持たない者がいる世界。
三歳で魔力があることが分かったミリィは、魔力を持たない両親から疎まれ、ほとんど育児を放棄されていた。
そんなミリィを育ててくれたのは、近所に暮らす魔力のない老婆マーサだった。
「絡まった毛糸と同じだよ。一つずつほどきな」
暴れる魔力を前にマーサが教えてくれたその言葉は、やがてミリィだけが持つ不思議な才能へと育っていく。
魔力の絡まりを見つけ、それを《ほどく》こと。
五歳の冬、マーサは亡くなった。
残されたのは、少しのお金と首飾り、遠い町に住む古い友人への手紙。そして「大人になったら開けること」と言われた、一つの古い箱。
「この村を出なさい。いろんなものを見ておいで」
大好きなおばあちゃんの遺言を守り、ミリィは一人で村を出る。
――本人は一人で旅をするつもりだった。
けれど、五歳児を一人で旅させてくれるほど、世の中の大人たちは薄情ではなかった。
口うるさい商人見習いのセオ。
勝手に兄を名乗る冒険者。
素直ではない薬師。
迷子だと思って助けた貴族の青年。
いつの間にかついてきた風尾狐のシロ。
行く先々で人に助けられ、魔法を教わり、ときには魔道具を直して旅費を稼ぎながら、ミリィの世界は少しずつ広がっていく。
料理人からは火の魔法。
薬師からは清浄の魔法。
船乗りからは風を読む魔法。
教わった小さな魔法の一つ一つが、やがてミリィだけの魔法になっていく。
そして離れて旅をするセオとの間を行き来する、不思議な《渡り鳥》もまた、二人と一緒に少しずつ姿を変えて――。
これは、愛されることを知らなかった小さな女の子が、旅をしながらたくさんの人と出会い、魔法を覚え、兄や友達や大切な人を増やしていく物語。
そしていつか、自分自身の「帰る家」を見つけるまでの物語。