あらすじ

薬草の匂いが染みついた指先だけが、蘇蘇(そそ)の誇りだった。 本物の令嬢・董紫苑(とう・しえん)の身代わりとして後宮へ上がれ——そう命じられた夜、蘇蘇は覚悟を決めた。所詮は猫を被るだけの仕事だ。付け焼き刃の作法と、誰にも負けない毒物の知識さえあれば、どうにかなる。 ところが蘇蘇に与えられた役目は、妃候補ではなく「毒見役」。毒を盛られて死ぬための係だと同室の候補たちが嘆くのを尻目に、蘇蘇はひとり深くうなずいた——これほど働きやすい部署が、後宮のどこにあるというのか。 迎えた入宮の宴。居並ぶ妃候補の一人が倒れたその瞬間、唇に浮いた痺れの色を見て、蘇蘇の口が勝手に動いた。 「唇から痺れが来ているなら、附子で間違いありません」 しれっと呟いたその一言を、後宮の薬事一切を統べる美貌の官吏・藺清昴(りん・せいぼう)だけが聞き逃さなかった。 猫を被った贋物の令嬢と、化けの皮を見抜く男。毒と縁談と勘違いが渦巻く後宮で、蘇蘇は今日も一服の薬を盛る——もちろん、解毒のほうを。

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小説を読もう2026/09/12
  • 現在の作品にせ妃ではございますが、毒だけは本物でございます 〜身代わり候補、後宮の毒見役に成り下がりまして〜