あらすじ
玲朝帝国の後宮。その片隅、打ち捨てられた妃が暮らす冷宮の竈番・蘇芳(すおう)は、仕えた主──前皇妃蓮姫(れんき)とともに、首を刎ねられた。罪状は「皇子への毒殺未遂」。しかし蘇芳は知っていた。あの日の薬湯に毒は入っていない。毒は──朝粥に、あった。
気づけば三年前。蓮姫がまだ皇妃として栄え、冷宮送りになる前の時代に、蘇芳は戻っていた。しかも記憶の引き金になったのは、二度目の人生で嗅いだ、あの朝粥と同じ匂いだった。
「……今度は、貴方を食わせない。毒にも、運命にも」
知識と観察眼、そして何より「美味い飯を作る意地」だけを武器に、蘇芳は後宮の台所という最底辺から、三年後の処刑を覆す犯人探しを始める。だが、近づく真実ほど、誰かの「食卓」が崩れていくのだった──。食べることは、生きること。毒されることは、殺されること。食と死のあわいを行く、下剋上後宮ミステリー。