あらすじ
翠玉帝国の後宮。その奥の膳房(ぜんぼう)に、一人の少女が放り込まれた。
名は小梅(しょううめ)、十六歳。育ちは西街の腹ペコ孤児。特技は「何を食べても腹を壊さない」と「舌だけは人一倍バカに敏感なこと」。そんな彼女が見染められたのは、妃たちの膳に口をつける毒見役として――だった。
配属先は「氷の殿下」と呼ばれて恐れられる皇弟・白蓮(はくれん)の宮。妃でもない男に毒見役がつくこと自体が異例で、しかもこの殿下、三年間、まともに食事を摂っていないという噂だった。
小梅は知ってしまう。殿下の膳に盛られる料理が、毎日ごく微量ずつ、味を殺す方向に「調整」されていることを。それは暗殺か、嫌がらせか、それとも――誰かの必死の警告か。
「食べ物で人を騙すなんて、一番しちゃいけないやつだ」
腹が減っては戦ができぬ、謎が解けては飯がうまい。毒物知識は偏食家の店主仕込み、度胸と胃袋は路地裏仕込み。食いしん坊な毒見役が、後宮の食卓に仕掛けられた「おいしくない嘘」を、一口ずつ暴いていく。
腹ペコ推理劇、開宴。