あらすじ
終電の窓に映る自分の顔を見て、ふと思う。
——僕、何してるんだろう。
大きな絶望じゃない。だから誰にも言えない。死にたいわけじゃない。でも、幸せだとも言えない。ただ、このまま何年も同じ日々が続いたら、自分はどうなってしまうんだろう——そんな漠然とした不安だけが、消えずに残っている。
友達に囲まれていたはずなのに、その輪の中で自分だけが透明になっていた高校時代。誰にも見せられない感情を、こっそり歌詞に書き換えていた夜。職場のバイトが放ったたった一言に、一瞬だけ浮かび上がっては、自分ですぐに打ち消してしまう小さな希望。
近すぎることを怖がって、大切な人との距離を測り続けてしまう不器用さ。
——あなたにも、覚えがないだろうか。
大きな挫折も、劇的な転機もない。それでも積み重なっていく疲労と、諦めと、誰かのささやかな優しさ。この物語は、そんな「何者でもない」僕らの、名前のつけようがなかった日々に、そっと言葉を与えていく。
読み終えたとき、大きな感動は残らないかもしれない。ただ、こう思えたら。