あらすじ
魔法が生活のすべてを支える世界。
火を起こすのも、料理をするのも、物を運ぶのも、戦うのも――魔法を使うのが当たり前。
そんな世界で、ごく普通の魔法使いとして平穏に暮らす私は、一人息子のことだけが心配だった。
息子には、確かに魔力がある。
それなのに、なぜか魔法をほとんど使おうとしない。
毎日やっていることといえば、走る、鍛える、殴る、蹴る。
さらには、誰から教わったのかも分からない奇妙な武術の修行ばかり。
私はずっと思っていた。
――せっかく魔力があるのに、どうして魔法を学ばないんだ?
だがある日、私はこの地方を治める強大な魔法使いとの争いに巻き込まれ、圧倒的な力の前に敗れてしまう。
そんな私を助けるために現れたのは――息子だった。
魔法を使わず、鍛え上げた肉体と武術だけで魔法使いに立ち向かう息子。
しかし、本当に驚くことになったのはその後だった。
追い詰められた息子が、初めて自分の「魔法」を使ったのだ。
現れたのは、剣と盾、そして見たこともない武器を携えた謎の女戦士。
魔法陣はない。
既知の召喚術式もない。
使い魔でもない。
魔法使いである私にも分からない。
――こんな召喚魔法、この世界には存在しないはずなのだ。
しかも。
「久しぶり。修行はサボってないでしょうね?」
「毎日やってるよ、師匠」
……師匠?
待ってくれ。
お前はいったい、私の知らないところで何をしていたんだ?
これは世界を救う勇者の物語ではない。
息子のことを理解しているつもりだった平凡な父親が、たった一日で、息子の強さも、秘密も、交友関係も――何一つ知らなかったことを思い知らされる物語。