あらすじ

十一月、雨の神田。 昼飯を食い損ねた「俺」は、ガード下の立ち食いそば屋へ飛び込み、天玉そばを注文する。 熱いつゆ。まだ端のさくりとしたかき揚げ。生卵。 かき揚げを崩し、黄身を割れば、つゆの味はまた変わる。 そこへ一人の常連客がやってきた。 「たぬき。そば半分、つゆ多め。ネギ多め。揚げ少なめ」 妙に細かい注文。 しかも男は、そばよりもつゆばかり飲んでいる。 かつては毎日のように天玉そばを食べていたという男は、「俺」にひと言だけ残して雨の中へ消えていく。 「そのうち兄ちゃんも分かるよ。引き算」 足し算ばかりの天玉そばと、二十年かけて辿り着いた一杯。 立ち食いそば屋でほんの数分だけ交差する、二人の男の食欲と人生の一部。

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カクヨム
カクヨム2026/09/12
  • 現在の作品天玉、つゆ多め──引き算を覚えるには