あらすじ
登録者47人。
三年前、高校生だった榁木玖遠(むろき くおん)は、まったく人気のないダンジョン配信者だった。
何をやっても伸びない。
配信をしても、見ているのはいつもの数人。
だから引退を決めた日、最後くらい好き勝手やって終わろうと思った。
『実は俺、世界を裏から守る秘密結社の総帥なんだよね』
もちろん、全部嘘。
悪ノリで秘密結社《空席》を作り、専用サイトにエンブレム、階級、合言葉まで設定した。
そして最後に、
『困ってる奴でもいたら助けてやってくれ。それが俺たちの活動ってことで』
そんな適当な言葉を残して、玖遠は配信者を引退した。
――それから三年。
すっかり黒歴史の存在を忘れていた玖遠は、偶然《空席》のサイトを見つける。
懐かしさから覗いてみると――
構成員、三万人以上。
国内各地に支部。
所属するS級探索者、十二名。
玖遠の知らない部署。
玖遠の知らない規則。
玖遠の知らない最高幹部たち。
そして、そのすべての頂点には今も『総帥』として玖遠が君臨していた。
「……何これ?」
さらに、三年間一度も姿を見せなかった総帥の帰還を知った最高幹部からメッセージが届く。
『総帥、お帰りなさいませ』
「……誰?」
冗談だったはずの《空席》は、三年の間に本物になっていた。
しかも組織を率いる最高幹部は、S級探索者、人気ダンジョン配信者、天才研究者など、なぜか有名な美少女ばかり。
一方、その頂点にいる玖遠は――普通の大学生。探索者としても別に強くない。
「いや、俺よりお前らの方が圧倒的に強いだろ」
黒歴史を解散させるつもりだった玖遠だったが、どうやら三年前の冗談に救われ、本気で活動してきた人間が大勢いるらしい。
だったら。
自分が作ったものくらい、自分で責任を取るしかない。
――これは、軽いノリで作った秘密結社の後始末をするはずだった元底辺配信者が、三万人以上の部下に振り回されながら、少しずつ本物の『総帥』になっていく物語。
……とりあえずお前ら、俺の知らない設定を勝手に増やすのやめない?