あらすじ
1998年。銀行の倒産が続き、社会は「未来が見えない」という重い空気に沈んでいた。
しかし音楽だけは異様に明るく、浜崎あゆみがデビューし、宇多田ヒカル登場の前夜――日本はCDバブルの絶頂へ向かっていた。
そんな時期、僕の話し相手は里美になっていた。
四月、彼女は誰一人知り合いのいない病院のNICUに配属され、三交代制の勤務に追われながら、孤独と疲労を抱えていた。
僕は彼女の愚痴を聞き、勤務の一時間前に電話で起こし続けた。
その声の合間に、千波や級長の近況がかすかに届くのが、どこか嬉しかった。
そんなある日、長く途絶えていた重夫から突然の着信が入る。