あらすじ
言葉が現実を形作る世界――そこでラースの力は、最悪の呪いと恐れられていた。
《終焉の言葉》の継承者である彼は、意志を込めて発した一言が絶対的な破壊へと変わる。物質を消し去り、大地を引き裂き、一瞬で命さえも灰へと還してしまう力。その力によって世界を滅ぼさないため、ラースは自ら絶対の沈黙を選んだ。喉をルーンの封印具で閉ざし、死の地帯の中心へと身を隠し、忘れ去られた怪物として生きることを受け入れたのだ。
そんな静寂に閉ざされた日々は、一人の少女――エリスの出現によって終わりを告げる。
胸に謎の核を宿し、自らの過去を何ひとつ覚えていない彼女は、追っ手の暗殺者から逃れる末にラースの領域へと踏み込んでしまう。目の前で彼女が殺されようとした瞬間、ラースは十年守り続けた沈黙を破り、たった一つの破滅の言葉を囁いた。
敵も景色もすべて灰と化した。
――だが、エリスだけは、彼の隣で無傷のまま立っていた。
壊滅的な力を受けても傷ひとつ負わない彼女は、十年ぶりにラースへ触れ、彼の声を聞き、その名を呼んでも生きていられる、たった一人の存在となる。
失われたエリスの記憶の真相を追い、ラースの力を封じる術を探すため、二人は不本意ながらも共に旅をする契約を結ぶ。
命を懸けた戦いを重ね、押し殺してきた想いが少しずつ胸に積もっていく中で、ラースは気づく。
本当に恐れるべきものは、自らの力ではない。
――彼女に「愛している」と告げてしまうことだ。
その一言が放たれた瞬間、世界そのものが終焉を迎えるかもしれないのだから。