あらすじ
王太子レオンとの結婚式を終え、幸せの絶頂にいた侯爵令嬢リゼット。ところが翌朝、夫は剣を向けて言う。
「あなたは誰だ」
レオンは国政も家臣も覚えているのに、リゼットの記憶だけを失っていた。
原因を探るため王宮の記録庫を調べたリゼットは、さらに信じがたい事実を知る。二人は昨日が初めてではなく、すでに七回結婚していたのだ。
過去の花嫁は全員「リゼット」。伯爵令嬢、神官の娘、薬師、仕立屋の娘――身分も家族も違うのに、皆どこか今のリゼットに似ていた。
やがて明らかになる王家の秘密。
初代国王は国を守る精霊と、「王となる者は、国より愛する一人を持ってはならない」という契約を結んでいた。そして契約によって記憶を奪われていたのは、レオンではなくリゼットだった。
七人の花嫁は、すべて同じ魂を持つ彼女自身。
レオンを愛するたび、リゼットはそれまでの人生を奪われ、新しい名前、新しい家族、新しい過去を与えられてきた。一方、レオンだけはすべてを覚え続けていた。
しかも今回、次にリゼットが消えれば八度目。もう新しい人生は与えられず、魂そのものが消滅する。
リゼットを救うため、レオンは「愛していない」と嘘をつき、彼女を遠ざけようとする。
だがリゼットは拒む。
「私を守るためでも、私の人生をあなたが決めないで」
二人は、愛を捨てるのでも、国を捨てるのでもない第三の道を選ぶ。
王とは国と一人の人間を天秤にかける者ではなく、国を形作る一人一人を守る者。
その答えを突きつけたとき、四百年続いた精霊契約は書き換えられ、七度の婚姻も消滅する。
すべてが白紙になったあと、リゼットはレオンに告げる。
「今度は、私が今のあなたを好きになってから結婚してください」
七回の結婚を終えた二人は、八回目を――結婚ではなく、恋から始める。