あらすじ
父親の都合で転校を繰り返し、「どうせすぐに忘れられるから」と誰とも深入りせずに生きてきた三好逢璃(みよし あいり)。
彼女の誰にも明かさない密かな心の拠り所は、カメラのレンズを通して空模様を切り取ること。それは、いつしか定住に憧れを抱くようになった逢璃が『普遍』を手に入れたいと願ってのことだった。
高校二年生の初秋。最後の転校先で出会ったのは、生徒会長でクラスメイトの柳田慶吾(やなぎだけいご)。周囲から「世話焼き」と慕われている彼は、『転校生の世話役』として初日から逢璃を甲斐甲斐しく面倒をみはじめる。
しかし、慶吾は見事なほどに真顔を崩さず、予測のできないリアクションばかり。逢璃の心の中は緊張と戸惑いで忙しない。一方で、慶吾がこれまで出逢った誰よりも真摯で嘘のない人物であるとだんだんわかって、慶吾をより目で追うようになる。
そんな頃に迎えた、北海道への修学旅行。人混みからひっそりと抜け出して訪れた都市型水族館で、ふたりは互いへの理解を更に深めていく。
逢璃の『理解されない寂しさ』に寄り添い、隠しつつも求めていた『対等な関係』を自然と叶えてくれる慶吾へ、特別な想いを自覚する逢璃。同時に、このひとにだけは忘れられたくないと強く願い始める。
「これで忘れねーだろ。お互いに、お互いのこと。アンタはこれ見るたびに、俺のこと絶対思い出す」
勿忘草を想起させる『あるもの』を手渡した慶吾もまた、逢璃をとおしてみずからの虚無感と向き合い、何にも染まることのできない彼女を気にかけ続けていた。
誰の記憶にも残らない『背景のひとり』だった逢璃が、慶吾の言葉と優しさに背中を押され、自分の『好きなもの』と未来に向かって歩み出す。
小さな成長と大きな救いを彩る、青い恋の物語。
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