あらすじ
「レオ。お前はここに残れ」
百人隊長にそう言われた。
殿(しんがり)というやつだ。要するに、そこで死ねという意味である。
いや、僕、土木兵なんだけど。
持ち物、柄の折れかけた円匙一本なんだけど。
というわけで、逃げました。
お爺ちゃん犬のシュナと一緒に、崖の横穴へ。
入り口を塞いだら、爆音が消えた。
発光苔を灯して、冷たい泥をこねて、あったかい土のベッドを作る。
……あれ。
これ、けっこう快適じゃない?
そこから僕は、のんびり地下を掘り広げることにした。
行き倒れていた泥竜の子・ムクを拾って、転んでも痛くないように床をぷにぷにの泥でコーティング。
勝手に出ていかないように、ベビーゲートも設置。
泥だらけで笑うムク。
やれやれと孫を見守るシュナじいちゃん。
うん。平和だ。
――なのに。
換気口から落ちてきた騎士は、僕のクッション床を見て震えた。
「大砲すら弾く超硬度装甲……!」
ベビーゲートの前では平伏した。
「物理と魔法を完全に遮断する、神話級の絶対防壁……!」
忍び込んできた敵兵は、ムクが遊びで掘った泥の迷路で勝手に力尽きた。
「盟主様は、指一本動かさず敵を無力化なさった……!」
いや。
僕、晩ごはん何にするか悩んでただけなんだけど。
家族のために家をDIYしていたら、いつのまにか難攻不落の要塞ができていた男の話です。