あらすじ
この世界には、限定的にはなっているものの、魔法が存在する。
そんな中で比較的うっかり魔法を使えてしまう存在が、生後間もない知人の娘に祝福を授けた。
魔法は、願いで、愛なのだ。
そこで起こったことは、過去にも前例のある、日本という別世界の国からの人格の複製だった。
産まれて間もない児の名前は、
ラヴィ・ティフェレット・アヴィーハーという。
英雄とされたことを大活躍させた、ラヴィというイシュの民から名を貰っている。
イシュの民とは、はるか大昔、人間と魔物との間に宿った願いの魔法によって生まれた種族。
ティフェレットの母親がそのイシュの民であり、ティフェレットは先祖返りという、魔物の特徴を持たずに生まれる例外種だった。
また、砂漠の国はそのラヴィを、世界とは異なる視点で英雄視しており、他ならぬその母親が、「虹の架け橋」という伝承として書き記している。
誕生祭で授けられた名はさらに長く、
ラヴィ・ティフェレット・アヴィーハー・ラ・ケシェット・バ・アナンという。
位が高い者ほど、長い名が授けられる国で、名には様々な意味が込められるのが、砂漠の国の習わしだった。
栄光を背負う獅子
遺志を継ぐ導き手
ラヴィ:獅子、かつラヴィを連想させる導き手
ティフェレット:美・栄光
アヴィーハー:彼女の父
ケシェット・バ・アナン:雲の中の虹
こうしてみると、虹の架け橋という伝承そのものを意識しているとも読める。
ティフェレットは、王位継承第一位として、正式な後継者となった。
人間の姿形をしていても、一年で成体になるイシュの民。
それをもって奇跡の子だと証明するつもりで、砂漠の国は、全面的に表に出すことにしたのだ。
この物語は、気ままな観光中に興味深い人物を見つけて追い掛けるかのように、ティフェレットがどうなるか見てみようという観察記録である。
日本での彼女は、アキ。
どうやら元の世界との接続は残っていて、彼女はそれを、ハルと呼ぶことにしたようだ。
この世界の礎には、日本語を世界共通言語とする過去があった。
おそらく彼女には、個別にその接続があるのだろう。
ただ、そんなことは彼女にとって知るよしもないことである。
元の世界の彼女なりの常識に当てはめて、新しい身体での人生を生きるしかないのである。
——どうなるか見てみよう。