あらすじ
三鷹の坂の上に、あかつき荘という古い寮がある。
アニメ制作会社が借り上げたその家には、色彩設計、作画監督、脚本家志望、
声優志望――何者かになりたい人間ばかりが住んでいる。
その中心にいるのが、雨宮千景。
十一年前、たった一本の深夜アニメでこの国の夜を塗り替え、
そして、それきり自分の物語を書けなくなった男。
新しく入居した制作進行・朝倉灯は、この家に偶然来たわけではなかった。
十一年前、その最終回を観て家を出て、氷点下の国道を一晩じゅう歩いた
中学二年生の女の子。世間が「アニメに壊された」と呼んだ、あの子。
彼は十一年、その子を探し続けている。
彼女は、名乗れずにいる。名乗った瞬間、自分は「謝られる側」になるから。
誰も見ていない仕事を、それでも続ける人たちの日々。
そこに落ちる一枚の盗作。割れていく家。そして、消える灯。
――夜が明けるまで歩けば、朝は勝手に来る。
来ない朝を待つのは、しんどいけどさ。
全三十五話+間章三篇、約十万字。静かに報われる、長い片想いの物語。