あらすじ
「この時計の中に、何が入っていたのか——」
母の訃報を受け、久しぶりに実家へ帰省した恒一。
遺品整理を進める中で、かつて母が「絶対に捨てちゃだめ」と大切にしていた古い腕時計を見つける。
しかし、九時十七分で刻みを止めたその時計の裏蓋には、誰かが無理にこじ開けようとしたような小さな傷が残されていた。
さらに、押し入れの奥で見つけた桐の小箱、アルバムから不自然にごっそりと抜き取られた写真、そして母の旧友宛の投函されなかった手紙……。
違和感を覚えた恒一が調べ始めるにつれ、父や姉が何かを隠すように静かな口組みを見せる。
「その病院のことは、掘り返すな」
やがて明かされるのは、二十二年前の秋に存在した「三日間の空白」。
そして、幼い恒一だけが知らされていなかった、家族のあまりにも切なく優しい「嘘」だった——。
止まった針が動き出すとき、知られざる二つの命の物語が静かに交錯する。
家族の絆と赦しを描く、圧巻の長編ヒューマンミステリー。