あらすじ
「ヴィオレッタ! 貴様との婚約は、この場で破棄させてもらう!」——大広間で指を突きつけられた、その瞬間。侯爵令嬢ヴィオレッタは、前世を思い出した。古びた道具に値をつけて暮らしていた、ただの娘だったころのことを。
身に覚えのない罪状をいくら並べられても、彼女は動じない。けれど、王太子が婚約誓約書を真っ二つに破いて、床へぽいと投げ捨てた。その一点だけは、どうしても許せなかった。「——この、バカ王子がーっ!! なんて、もったいない! 裏は、まだまっさらなんですよ!」
凍りついた広間で、ただ一人が腹を抱えて笑った。第二王子である。彼は兄の前を素通りし、片膝をついてこう言った。「あなたは、兄上には、もったいない人だからな」。
激高した王太子が言い渡した罰は、王城のいちばん奥、廃棄倉庫の番人。ところが扉の向こうに眠っていたのは、何百年も忘れられた宝の山と、木彫りのフクロウに宿った神様だった。「わしが、神だからだ」。そのうえ、第二王子までが押しかけ従者になって居座ってしまう。
そして十日後。惨めな姿を嗤いに来た王太子と男爵令嬢を待っていたのは、彼女が破れた紙の裏に書きつけた、一冊の目録だった。
捨てられた物と神様を拾う令嬢の、婚約破棄から始まる読み切りです。