あらすじ
「その撤退命令、契約書のどこに書いてありますか」
敗走する帝国軍。増水した川に架かる、たった一本の石橋。「平民の命など、貴族を守るための薪に過ぎん」と言い放った子爵に対し、傭兵団長クラウス・ファン・デル・ファルマーが差し出したのは、剣ではなく一枚の羊皮紙だった。
元帝国軍主計監査局、特務官。徹夜の決算処理で胃を痛める、三十五歳の中間管理職。彼の武器は、冷徹な契約法規と、寸法を揃えた兵器・反復される教練・規格化された築城によって組み直された、まったく新しい軍隊そのものである。
二年前、「名誉ある殿軍」という美名の下で補給を絶たれ、帳簿の上で「損耗率100%」という無機質な数字に換えられて消えた親友がいた。以来この男は、部下の命を一枚の銅貨も安売りしない。
免責条項で貴族を破産させ、踏み倒された報酬は差し押さえ、不良在庫のスクラップは再生させて火線に変える。前近代の暴力が垂れ流す「理不尽なツケ」を、耳を揃えて清算させる本格異世界戦記エンタメ。
——兵は費用ではない。資産である。