あらすじ
一日に一度、物の性質をほんの少し変える。
それが、ルーカスのスキル《調整》――のはずだった。
前世も今世も、農家の息子。
十八歳のルーカスは、小刀を切れやすくし、麦の種を病気に強くして、畑仕事を早く終わらせる工夫を重ねていた。空いた午後には、やってみたいことがいくらでもある。
ところがある日、王都から研究者が訪ねてくる。
各地で広がる麦の病に、彼の《調整》が関わっているかもしれないという。
自慢していた成果が、誰かを困らせていたのか。
確かめるため、ルーカスは研究者アルベルト、護衛リディアとともに、種の行方を追う調査へ加わる。
試して、比べて、記録する。
すると、長年使ってきた力の「当たり前」が、少しずつ崩れ始めた。
一日一回のはずが、二度使える。見えるようになった数字も、それだけでは説明できないことがある。
道具を直し、知らない町を歩き、三人で食卓を囲む。
研究に夢中になれば夕飯は冷めるし、物の性質が分かっても、隣にいる人の気持ちは簡単には分からない。
それでも、もう一つだけ試してみたい。
小さな工夫と日々の暮らしから、自分の力と世界の仕組みを探っていく、異世界探究ファンタジー。