あらすじ
前世でカジノディーラーとして働いていた男・レンは、ある日突然、剣と魔法の異世界へ放り込まれる。
剣の才能もなければ、魔法も使えない。身元も金もないレンは、拾ってくれた酒場で皿洗いをしながら食いつなぐことになった。
そんなある夜、客同士が硬貨を投げて賭けているのを目にする。
胴元なし。判定役なし。ルールも曖昧。当然のように揉め始める客たちを見て、レンは思った。
――この世界、賭け事はあるのに、まともな賭場がない。
元ディーラーの知識を使って簡単なゲームを作ると、酒場はたちまち大盛況。客が増え、酒が売れ、レンにも初めて自分の腕で稼いだ金が入る。
そこへ現れたのが、魔王討伐へ向かうはずの勇者アルベルトだった。
「一回だけやってみたい」
その一回で勝ったのが、すべての始まりだった。
勝てば続け、負ければ取り返そうとする勇者。止める仲間たち。膨らんでいく賭け金。
そしてついには、魔王討伐の路銀まで卓の上へ。
レンはただ、客が遊べる場所を作っただけだった。なのに勇者は出発せず、噂を聞いた冒険者や商人まで押し寄せ、やがて王国そのものが賭場を無視できなくなっていく。
これは、異世界に「カジノ」を持ち込んだ元ディーラーが、気づけば世界の命運まで卓上に乗せてしまう物語。