あらすじ
ダンジョンが出現して三十年。
強力なスキルを持つ探索者たちが富と名声を得る時代に、真壁修司、三十八歳は十五年間ずっとE級探索者のままだった。
攻撃系スキルなし。
魔法適性なし。
身体能力も平均程度。
同期はとっくにA級やB級へ昇格し、若い探索者からは、
「十五年やってE級って、逆にすごくない?」
と笑われる始末。
それでも修司は気にしていなかった。
彼の仕事は、魔物を倒すことではない。
ダンジョンで遭難した人間を連れて帰る――《救難員》だからだ。
足跡の深さから負傷者の状態を読み、壁についた傷から魔物の移動経路を判断する。
空気の流れから未知の通路を見つけ、僅かな臭いの変化から毒や罠を察知する。
十五年間で救助した探索者、二百七十三名。
死亡者――ゼロ。
だが、その記録を知る者はほとんどいなかった。
そんなある日、日本有数のS級探索者パーティが未踏破深層で消息を絶つ。
救助に向かったA級チームすら撤退。
生存可能時間は残りわずか。
救難局が救助中止を決定しようとした時、修司は一人で装備を整えていた。
「まだ生きてるなら、迎えに行かないとな」
誰にも期待されない万年E級。
その男は、救助隊が全滅しかけた深層へたった一人で潜っていく。
そして翌朝。
修司は行方不明だったS級探索者五人を、全員連れて地上へ帰還した。
「真壁さん……あなた、本当にE級なんですか?」
「そうだけど?」
「いや、おかしいですよ! あなたが一番おかしいです!」
その救助をきっかけに、修司の平穏だった生活は一変する。
彼に命を救われたS級探索者。
かつて彼から基礎を教わったトップランカー。
救難記録を調べて異常さに気づいた探索者協会。
さらには国内最大手クランまで、修司を指名し始める。
「報酬はいくらでも出します。うちの遠征に同行してください!」
「嫌だよ。今日は新人の救難訓練があるから」
戦闘力だけが強さではない。
誰よりもダンジョンを知り、誰よりも人を生きて帰す男。
これは、十五年間誰にも評価されなかった万年E級救難員が、その本当の価値を世界に知られていく物語。