あらすじ
人と獣人。長く反目してきた両国が、ついに和平を結ぶことになった。その証として、人間の貴族から一人、獣人の王のもとへ嫁ぐ。ただし相手は、人々が「獣」と蔑み恐れる、銀狼の獣王。
華やかな二人の姉は、獣に嫁ぐなど死んでも御免だと拒んだ。そこで白羽の矢が立ったのが、いてもいなくても同じと言われてきた、地味な三女リーゼだった。
けれどリーゼは、恐れも侮りも抱かなかった。獣人とて、心を持つ一つの民。ならば偏見ではなく、まっすぐに向き合おう。そう決めて、彼女は北の国へ旅立った。
そして獣王フェンリスは、リーゼを一目見た瞬間に、雷に打たれたように立ち尽くした。
「――番だ。俺の、生涯ただ一人の」
銀狼は、生涯にただ一人の伴侶しか持たない。何百年に一度しか現れぬ、運命の番。それが、地味だと蔑まれてきたリーゼだった。
誰にも必要とされなかった娘を、獣王はこの世の何より、代わりのきかぬ宝として慈しむ。やがて獣王の権勢を知った姉たちが羨んでも、もう遅い。彼が求めるのは、リーゼただ一人なのだから。