あらすじ
月凪大学商学部のゼミ同期会で、俺が結婚すると話した途端、テーブルが一気に騒がしくなった。
「じゃあ、榊原の結婚相手が誰なのか当てようよ。本人が問題出して」
幹事が余興用に用意していたホワイトボードが配られる。
何人かの視線が、自然と一ノ瀬紗季へ向いた。
大学時代から俺たちは何かと一緒にされ、卒業後には実際に付き合った。だから、みんながそう思うのも無理はない。
ただ、俺と紗季は十か月前に別れている。
そのことを、ここにいるほとんどの人間は知らなかった。
「俺が一番好きな食べ物は?」
最初の問題を出すと、ほとんどのボードに「栗のモンブラン」と書かれた。
紗季だけが違った。
――シーフードグラタン。
「え、榊原ってエビとかカニ駄目じゃなかった?」
「ゼミの飲み会でもずっと避けてたよな」
紗季は自分の答えを見て、小さく首を傾げた。
「そうだっけ。じゃあ、私の勘違いかも」
笑い声が上がった。
「一問目はノーカン。もう一個いこう」
俺はマーカーを持ち直す。
「卒業の時にゼミで撮った記念写真。真ん中にいたのは誰?」
今度はほぼ全員が同じ答えを書いた。
――悠真と紗季。
けれど、紗季のボードには別の名前があった。
――紗季と湊。
笑い声が止まる。
隅に座っていた白石湊が顔を上げた。
「紗季、俺、その年まだ卒業してないよ。あの写真にも写ってない」
「知ってる」
紗季はボードに書いた名前を見つめた。
「でも、一緒に卒業写真を撮れなかったことは、ずっと少し心残りだったから」
マーカーを持った俺の手が止まった。
今日は、俺の結婚相手を当てるはずだった。