あらすじ
閉店後のクリーニング店では、人間がいなくなると服たちが喋り始める。
そこへ運び込まれてきたのは、有名女優が授賞式で一度だけ着た一点物のドレス《エレノア》。半年かけて作られ、世界中から見つめられた彼女は、一度しか着られないことを誇っていた。
その隣に吊るされていたのは、三枚二千九百八十円で売られていた白いシャツ《シロ》。十年間、持ち主の面接、デート、仕事、結婚、子供の誕生、何でもない日々を一緒に過ごし、もうすぐ捨てられようとしている。
「あなたは長く生きる。私は永遠に残るの」
「お前は作品なんだろ。俺は生活だ」
一瞬のためにすべてを注がれること。長い時間、誰かの日常で使われ続けること。美しいまま残ること。ボロボロになるまで必要とされること。
服にとって、幸福な生涯とは何なのか。
答えの出ない幸福論を、洋服たちが本気で語り合う三話完結の短編。