あらすじ
この子以上に完璧な女の子は居ない。
十八歳の悠真が夢中になっているのは、人気アイドルの「美鈴」。
歌番組にしか姿を見せず、SNSもライブも握手会もない。
私生活は一切不明。
それでも、ステージの上ではいつだって完璧に笑っている。
悠真にとって美鈴は、まるで自分の理想をそのまま形にしたような、決して手の届かない存在だった。
――妹が、一枚の古い写真を見つけるまでは。
「ねえ、お兄ちゃん。これ、美鈴ちゃんじゃない?」
そこに写っていたのは、二十年前の夏祭り。
そして写真の隅には、今とまったく変わらない姿で笑う美鈴がいた。
調べていくうちに見つかる、さらに古い写真。
存在しないはずの過去。
失われていく彼女の記録。
そしてある夜、録画したはずの歌番組に、放送にはなかった十七秒間の映像が残されていた。
暗闇の中、美鈴はまっすぐこちらを見つめて言う。
「悠真。やっと見つけた」
なぜ、彼女が僕の名前を知っている?
なぜ僕は、初めて見るはずの彼女をずっと前から知っている気がする?
忘れてしまった十二年前の夏。
歳を取らない少女。
そして、世界から少しずつ消えていく「美鈴」という存在。
これは、一度忘れてしまった大切な人に、
もう一度恋をする物語。