あらすじ
4月10日。鈴井春馬は20歳になり、法律上は大人の仲間入りを果たした。だが春馬本人には大人になった実感がまるで感じられなかった。
──ダンジョンと呼ばれるものが世界中に出現するようになっておよそ70年。ダンジョンは危険に満ちた場所であった。凶悪凶暴なモンスターは徘徊し、常識では考えられない過酷な環境が満ちている。だがその危険を凌駕するメリット……資源の山、未知の技術が数多く眠っている、まさに宝の山そのものであった。
ダンジョンからそれらを持ち帰る者たちを『探索者』と呼ぶようになる。
特に日本は資源不足をダンジョンの力によって補い、高度経済成長を果たした程である。
春馬もまた『探索者』。十代の青春をダンジョンに全て捧げ、莫大な富と、世界最強と言われる程度の力を一個人が得ている。
しかし春馬には、ぽっかりと心の中に空洞があった。どうにも満たされない感覚、洞に感じる痒みに似た疼き。
似た感覚はこれまでに幾度も感じていたが、ダンジョンに籠ってそれらを発散してきた。しかし20歳という節目を迎えて、無視できないくらいに大きくなったのだった。
迷ったら潜るな。ダンジョンにおける、『探索者』たちの標語のようなものだが、春馬は自分がそれに当て嵌まると納得した。
しばらく目を向けていなかったダンジョンの外。そこへと春馬は視線を向けることにしたのだった。
これは、ダンジョンの中にない、春馬の宝物を見つけるまでの物語。