あらすじ
青凪総合大学の新入生オリエンテーション合宿で、レクリエーションの罰ゲームが私に当たった。歌うよう言われて困っていると、恋人の神谷颯真がすぐ横から口を挟んだ。
「音羽、ほんと歌が苦手だから勘弁してやってよ。その代わり、売店でみんなの飲み物買ってきてもらえば?」
颯真とは高校時代から三年間付き合っている。ただ、そのことは周囲にずっと隠してきた。合宿のあとにある新歓ライブで、私が贈ったギターを使って『君のとなり』を歌い、みんなの前で交際を明かす――それが、颯真との約束だった。
ところが、飲み物を抱えて戻った私の目に飛び込んできたのは、そのギターを弾いている颯真だった。
歌を向けられていたのは、親友の佐伯美月だった。
周りが面白がって囃し立てる中、美月は頬を赤くして颯真を見る。
「わざわざ音羽を売店に行かせて大丈夫? 戻ってきたら怒らない?」
颯真は弦を軽く鳴らして笑った。
「大丈夫。音羽なら、ちょっとかまっとけば機嫌直るって。今日は美月の誕生日なんだし」
私は人の輪の外で足を止めた。
冷たいペットボトルの入った袋が、じわじわと指に食い込んでいた。