あらすじ
「良薬は口に苦し」というが、小艾(シャオアイ)に言わせれば大噓だ。まずい薬など、匙加減ひとつで幾らでも旨くできる。
花街の外れで薬膳と毒見の腕だけを頼りに育った小艾は、手入れのどさくさに紛れて借金のかたに後宮へ売られ、以来三年、毒見女官という飯粒より小さな身分に甘んじていた。出世など望まない。ただ旨いものを食い、大過なく年季を終える——それだけが目標だったのに。
観菊の宴で貴妃が毒に倒れたその日、小艾は「たまたま」その場に居合わせてしまう。しかも間の悪いことに、毒見役として真っ先に疑われる立場でもあった。
——冤罪はごめんだ。それに、この程度の毒、なぜ誰も気づかない。
生来の負けん気と、揺るぎない食い意地を持て余しながら、小艾は今日も後宮の「事件」を平らげる。相手が皇后だろうが宦官だろうが、不味い謎はきっちり煮詰めて、旨く仕上げてやろうじゃないか。