あらすじ
第三王女リゼルの取り柄は、土いじりだけ。王宮の菜園と温室にこもり、国の食を静かに支えてきた地味な王女。けれど、その働きは「庭師の真似事」と蔑まれ、誰にも省みられなかった。
ある年、王国を襲った大凶作。本当は、リゼルの警告を無視した重臣たちの失策だった。にもかかわらず、責任はすべてリゼルに押しつけられ、彼女は痩せ細った辺境の町へと、追放される。
けれど――リゼルは、少しも悲しくなかった。
だってそこには、誰にも咎められず、思う存分、土に触れられる大地があったのだから。
枯れた畑を蘇らせ、痩せた土に花を咲かせ、薬草で病人を癒す。リゼルの手にかかれば、辺境の町は、みるみる豊かに、色づいていく。町の人々は彼女を慕い、そして――町を治める若き領主リヒトは、太陽みたいな笑顔で、まっすぐに彼女を大切にしてくれた。
その頃。リゼルを失った王国の畑は、次々と枯れ始めていた。彼女こそが、王国の実りを支える、真の担い手だったと、誰も知らぬまま。
今さら「王女殿下、どうかお戻りを」と使者が来ても、もう遅い。だってわたしの居場所は、もう、この花咲く町にあるのだから。