あらすじ
王都の片隅、香屋「白霧堂」で下働きをする娘、ミラ・アルダンは、孤児院育ちらしい実利主義者だ。人の心はどうでもいい。だが、匂いは決して嘘をつかない――幼い頃から人並み外れて鋭い鼻を持つ彼女は、香の配合だけでなく、人の汗、恐れ、そして毒の気配までも嗅ぎ分けることができた。
そんなミラのもとに、大聖堂から使いが訪れる。依頼主は、若く優雅な監察官ヴァレンティン。「病死した聖女候補のために、鎮魂の香を選んでほしい」というその依頼の裏で、ミラの鼻は死者の身体に残ったはずのない、ある草の匂いを見つけてしまう。
金のためなら聖堂の闇にも踏み込む。厄介ごとの匂いがする仕事ほど、割がいいと知っているから――。これは、嘘と毒の匂いを嗅ぎ分ける小娘が、都の闇に巣食う「病死」の正体を暴いていく物語。