あらすじ
「呪い? 馬鹿馬鹿しい。ただの化学反応(バケガク)ですよ」
東の帝国・赫(かく)。その帝都の片隅で、万物の構造を解き明かす「触媒技師」として暮らす少女、白葉(ハクヨ)。彼女の興味は、物質の結晶構造の解析と、特定の反応を劇的に促進させる「新規複合酸化物」などの触媒研究にしか向いていない。人付き合いを嫌い、煤に塗れて試験管を振るう彼女の工房に、ある日、無駄に顔のいい特務検校・黎雪(レイセツ)が転がり込んでくる。
持ち込まれたのは「触れずに燃え上がる呪いの絹」や「儀式の最中に一夜にして脆く崩れ去った宝剣」など、宮廷で起きる不可解な事件の数々。
超常現象として処理されかけるそれらの事象を、白葉は嫌々ながらも特製の「触媒粉」と持ち前の物理化学の知識で分析していく。物質の結合を紐解き、目に見えない構造の乱れを暴き出す彼女の眼は、やがて事件の裏に潜む人間たちのドロドロとした嘘をも、不純物として綺麗に析出させていくのだった。