あらすじ
十四年前――幾千もの雷が日本の空を裂いた、未曾有の嵐の日。その雷鳴と共に、一人の少年がこの世に生を受けた。
それから十四年。福岡の街で暮らす葛城朔夜は、筋トレを趣味とするごく普通の中学生として平穏な毎日を送っていた。
――ある朝、通学路で一本の《黒傘》を目にするまでは。
どこにでもあるはずの平凡な黒傘を境に、朔夜の日常には少しずつ異変が忍び寄っていく。
だが、彼はまだ知らない。
この世界には、人々の暮らす日常のすぐ裏側で、人知れず人の世を侵す《怪異》が存在することを。
その脅威から人々の安寧を守るため、古くから《退魔師》と呼ばれる者たちが戦い続けてきたことを。
多くの人間は、その世界を知ることなく一生を終える。しかし一方で、決してそこから逃れることのできない運命を背負って生まれる者もいる。
その誕生を長い年月待ち続けてきた者。
その存在を歓迎する者と決して歓迎しない者。
幾千の想いと目的が、朔夜の知らないところで静かに交錯していた。
そして今日ーー何も知らなかった一人の少年が、ついに世界の裏側へ足を踏み入れ、長らく均衡を保っていた怪異と人の世界に再び雷鳴が轟く。
これは、十四年前の嵐と共に生まれた少年が、自らの正体と世界の真実を知り――やがてその存在ひとつで、裏側の世界すべてを揺るがしていく物語。