あらすじ
【去る者を追わず、残る者を縛らず。男はただ淡々と、他人の人生の手綱を放し続けた】
慶長五年、関ヶ原。
西軍に与した大名・立花宗茂は、大津城を落とすほどの武功を挙げながら、本戦の敗報とともにすべてを失った。
柳川十三万二千石は召し上げられ、一夜にして無禄の浪人へ——。
主に従い京や江戸で極貧の暮らしに耐える者。
家族の生活のために他家へ去る者。
途中で力尽き、果てていく者。
突きつけられた残酷な現実を前に、家臣たちはそれぞれの道を選び出していく。
だが宗茂は、去る者を引き止めず、残る者に感謝も述べず、去った者を責めもしなかった。
誰の人生の手綱も、己の都合で握り直そうとはしなかったのだ。
五千石、一万石、三万石——。
少しずつ数字を積み上げていく男の陰で、戻れた者、戻れなかった者、そして先に世を去った妻・誾千代や重臣・小野鎮幸。
元和六年、関ヶ原で改易された西軍大名の中で「ただ一人」、旧領・柳川への奇跡の復帰を果たした男が、城門の前で静かに手放したものとは。
◆ 本作のみどころ
史実が紡ぐ奇跡の逆転劇: 関ヶ原敗戦から二十年をかけて旧領・柳川へ復帰を果たした立花宗茂の壮絶な半生。
「他人の人生を支配しない」武士の美学: 絆を過剰に美化せず、生き残るために別々の道を選んだ人間たちの選択と選択の帰結を等身大で描く群像劇。
各部に[史実ノート]を収録: 史実として判明している記録と小説的創作の境界を明示。歴史好きの方にも安心してお楽しみいただける本格歴史小説です。
◆ 主な登場人物
立花宗茂: 柳川城主から無禄の浪人へ落ちながらも、誰の人生も束縛せず静かに己の道を歩んだ男。
十時連貞・惟保: 極貧の京・江戸、棚倉時代を通じて宗茂に従い続けた忠義の父子。
小野鎮幸: 高瀬に残された旧臣たちの生活を一人で背負い、加藤家に残る決断をした重臣。
誾千代: 立花道雪の娘。宗茂と離れ、肥後腹赤の地で一人静かにその生涯を閉じる。
加藤清正: かつての敵でありながら、困窮する宗茂や誾千代に静かに手を差し伸べ続けた武将。
◆ 作品情報
本編:全8部・全25話(完結作)
各部末尾に[史実ノート]収録
歴史ファンはもちろん、「己の美学を貫く男の生き様」や「静かで深く余韻の残る人間ドラマ」がお好きな方にぜひ読んでいただきたい一作です。