あらすじ
「この反重力鉄道の始発便に、お前の席はない」──完成披露式の壇上で、王太子ジェラルドは婚約破棄を高らかに宣言した。
公爵令嬢アステリア・ヴェルンハートは、前世で日本の鉄道技術者だった。異世界に転生してから七年、前世の知識を応用し、空を疾走する世界最速の交通革命──反重力鉄道を、独力で設計し敷設した。
だがその功績はすべて、王太子と侯爵令嬢ミレーヌのものにされ、彼女はただ切り捨てられる駒だった。
「承知いたしました。では、私はこれで失礼を」
泣きも縋りもせず、氷のように静かに退場するアステリア。誰も知らない。この鉄道の“核”が、誰と繋がっているのかを──。
翌朝、満員の始発便が宙に浮かぶレールへと滑り出す。だが地上二十メートルに達した瞬間、全車両が静かに停止した。浮遊魔石が、真の所有者を失った命令を拒否したのだ。
この鉄道を復旧できる技術者は、この世にただ一人。
愛はいらない。私の鉄道が、名誉が、夢が返ってくれば、それでいい。
聖女権限で異世界最速の鉄道ごと去る、痛快な追放ざまぁ譚。なお、苦情は受け付けません。
「山を越えて、海を渡って。空に浮かぶレールに、行き止まりはありませんから」
さあ、世界でいちばん速い旅の、始まりよ──。