あらすじ
「フィオナ。お前の記憶を消す」
王太子アルヴィスは、氷の聖女と呼ばれた私を「扱いづらい道具」と断じ、記憶を消して従順な人形に変えようとした。新たに祭り上げられた偽物の聖女ミレイユは、扇の陰で嘲笑う。
だが彼らは知らない。前世で記憶消去技術を研究していた脳科学者だった私にとって、記憶を奪うことは、その人間を殺すことと同じだということを。
そして――魔王封印の本当の『鍵』が、私自身の記憶であることを。
「いいですよ。私の記憶を消して。ただし――消えるのは、私だけじゃありませんけど」
価値を証明しようとするほど、奪われる。前世でそう学んだ私は、もう証明などしない。禁忌のプロトコルごと、魔王封印もろとも、この国を静かに去るだけ。
「なお、私が消えたら魔王封印も解けますけど、苦情は受け付けません」
すべてを持って国を出た私が辿り着いたのは、竜人の国。そこで出会った不器用な将軍ガレスと共に、今度こそ誰かに奪われるためではなく――私自身の意志で、記憶を『守る』研究を始める。
だが、私を追放した国では、封印の解けた魔王の瘴気が溢れ出していた。そして私の『記憶を守る力』こそが、その魔王を封じる前世未踏の一手になることを、私はまだ知らない。
ざまぁと再起、そして新たな冒険。復讐に涙は要らない。ただ、静かに微笑んで去るだけ。