あらすじ

深夜、一本の電話が、フリージャーナリスト・山本哲太を呼び出す。 「聖嶺会メンタルセンターに来てください。今夜、あの病院で起きていることを、あなたは知る権利がある」 巨大な精神科医療施設で、入院患者たちが施設を占拠した。だが、これは単なる立てこもりではない。人質はいない。要求もない。そして何より、逃げようとする患者が、一人もいない。 規制線の外から現場を見つめる哲太の前に、一人の女性患者が現れる。名は「陽子」。彼女は言う。 「あなたのお父さんは、患者じゃない」 哲太の父・修司は十五年前、この病院で「精神疾患の患者」として息を引き取ったはずだった。だが陽子の言葉は、その前提そのものを覆す。なぜ患者たちは逃げないのか。父は本当は何者だったのか。そして、なぜ患者たちは、二十年もの間、哲太が来るのを待っていたのか。 地下に眠る膨大な記録、政治家、裏社会、そして哲太自身も知らない自分の過去――。動き出した謎は、やがて一つの問いに収束していく。 誰が、人間を「患者」と定義するのか。 巨大な黒幕はいない。あるのは、それぞれの立場で、それぞれの重さを背負った人々の選択だけだ。真実を追っていたはずの哲太が、最後に気づくのは――真実の方が、二十年間、ずっと彼を待っていたという事実だった。

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小説を読もう2026/09/09
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