あらすじ

科学に脅かされて日本は開国した。  嘉永七年、黒船が現れた。大洋の竜かと見まごうばかりの黒煙を吐く蒸気船、雷の声かとばかり響む大砲、科学技術で西洋に二百年ばかし遅れをとっていた日本人にとってそれは恐怖の対象でしかない。  ともかくも日本は開国した。そして凄まじい勢いで西洋文明を学んでいった。これほどまでに日本人が熱心に勉強に励んでいた時代を私は他に知らない。たった四隻の黒船に怯えていたこの国の人々はやがて製糸工場を作り、溶鉱炉を作り、鉄道を通し、二度の戦争を戦い抜く。とうとう、世界一の軍艦や飛行機を作り上げ世界最大の工業国と戦うことになる。やがて敗戦を迎えるがそのわずか四年後、科学界最大の権威の一つノーベル物理学賞を受賞する。ここまで百年とたっていない。この百年間での物理学者の働きがいかに凄まじいものであったことは想像に難くない。が、それを詳しく知るものは多くない。  この物語はこの百年余りの日本近代物理学史である。主人公は多く見積もれば何百、何千という学者や技術者ということになるが、まずは日本物理学の黎明期を知るために3人の物理学者を追うこととする。  一人は会津で白虎隊として戦ったのちアメリカに留学。帰国後に日本人で初めて理学教授となった山川健次郎。  その弟子であり、地磁気、航空などで成果を上げた実験物理学の大家、田中館愛橘。  そして、ドイツ留学を経て日本に原子物理学を持ち込み、長岡モデルを考案したことで知られる長岡半太郎。  彼らは、宇宙も原子も見ることのできるその目と頭をもってして、この激動の日本をどのように見つめ駆け抜けていったのであろうか。

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カクヨム
カクヨム2026/09/09
  • 現在の作品物理の国へー黎明