あらすじ

「パートのおばさんが行ける階じゃない。補充は三階まででいい」 運営の主任さんはそう言うて、危険手当の申請書を突き返した。 うちは荻野恵子、四十九歳、大阪生まれ。ダンジョン内の自動販売機に飲み物を補充するパート。時給千二百五十円。 「せやけど主任さん、本部の端末に十階の売り切れ、出てますやん」 「探索者が我慢すればいい」 「我慢て。喉かわいた人を待たせるんは、うちの負けや。ほな、売り切れの機械は全部回りますんで」 魔物? 出てくるで、そら。ダンジョンやもん。 「仕事中や、邪魔すんな!」 一喝したら道を開けよる。何階の、どんな魔物でも。理由は知らん。うちは補充が忙しいんや。 十階で補充してたら、有名な配信者さんの画面に映ってしもた。 《誰?》《おばちゃん??》《魔物が道あけた……》 二十階では迷子のパーティに非常口を教え、三十階では売り切れの機械の前で泣いてた男の子にコーラを渡した。 《補充のおばちゃん来た!》《魔物より怖い》 主任さんが青い顔で呼び出した。「勝手に行くなと言ったろう!」 「売り切れの表示、本部に来てますやろ」 五十階の自販機は、十年前から誰も補充してへんそうや。

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カクヨム
カクヨム2026/09/09
  • 現在の作品「パートのおばさんが行ける階じゃない」そんなん言われたかて、売り切れの機械は全部回らな ~ダンジョン自販機の補充員、五十階の配信に映り込む~