あらすじ
オンラインゲームで偶然出会った湊と凪。
複数人の会話にうまく入れずにいた凪へ、湊は何気なく話を振った。彼にとってはただ、それが自然だっただけだ。けれど凪は、その一貫した優しさに惹かれていった。
やがて二人は、夜が明けるまで話すようになる。
くだらない冗談も、科学も、哲学も、何の説明もなく同じ速度で行き来できた。沈黙さえ心地よかった。湊にとって凪は、誰かといるのに、一人でいるときと同じくらい楽でいられる初めての人だった。
だからこそ、彼女の言葉と行動の小さなずれを、見過ごそうとした。
昨日の約束が今日には別の意味になり、問いただせば「そんなつもりじゃなかった」と返ってくる。
凪は嘘をついているつもりがない。
けれど湊は、少しずつ彼女の言葉を信じられなくなっていく。
好きだった。
離れたくなかった。
それでも別れた。
正しい選択をしたはずだった。
けれど別れたあと、湊は知る。
失ったのは凪だけではない。
彼女の前でだけ、何も削らず、何も言い換えずにいられた自分自身もまた、あの恋と一緒に失っていたのだと。
もし何度でも最初からやり直せるとしても、きっとまた彼女を好きになる。
そして、何度でも同じように別れる。
これは、忘れられない人の物語ではない。
愛していることと、ともに生きていけることが同じではないと知った、そのあとの物語。