あらすじ
「今日、死んでいたらいいのに」
そう思った。
朝の台所。
向かいの席では、お義母さんが新聞を読んでいる。
「今日も暑くなるそうよ」
穏やかな声だった。
私は無言だ。
そして心の中で、もう一度思った。
――今日、死んでいたらいいのに。
自分でも恐ろしくなった。
私は、この人に何かされたわけではない。
意地悪も、嫌味もない。
子どもたちのことも可愛がってくれる。
誰が見ても、良いお義母さんだった。
だからこそ、私は誰にも言えなかった。
「同居が苦しい」なんて。
きっと誰もが言う。
「良いお義母さんなのに」
*
私は昔、海外を飛び回る仕事をしていた。
知らない国へ行き、知らない人と出会う。
新しいことが好きで、自分の人生を自分で選んでいると思っていた。
それが今では、家から逃げるように車へ向かう。
ショッピングモールの立体駐車場。
できるだけ人目につかない遠い場所に車を停め、コンビニの昼食を一人で食べる。
そこだけが、私の居場所だった。
――私は、いつからこんな人間になったんだろう。
*
家族が嫌いなわけじゃない。
お義母さんだって、嫌いではなかった。
それなのに、家にいると息が詰まる。
小さなことに腹が立つ。
子どもたちに余裕を持てなくなる。
そして、そんな自分が嫌になる。
ある日、心の中で思った。
――いなくなればいいのに。
私は、その瞬間に気づいた。
私はもう、自分でも知らない自分になっている。
良い人しかいない家で
なぜ人は壊れてしまうのだろう。
これは、
一人の普通の女性が「悪魔嫁」になっていくまでの物語