あらすじ
王城の膳所で九年間、食材の産地を指先と鼻で見抜いてきたアデラは、王太子のお気に入り令嬢の
「食材選びなど令嬢の遊びだ」という一言で職を解かれた。王城を出る前の夜、九年分の産地帳から
仕入れ先と産地の対照だけを一冊に抜き書きし、毎朝ついてきた若い補佐に託して王城を去る。
辺境クラウゼ領で、先妻を食べ物で亡くした鰥夫の子爵ダリオと出会い、二人は毎朝の市場で
静かに距離を縮めていく。一年後、王城の国賓晩餐で外交使節が三名倒れた。枢密院が調べると、
膳所には産地の記録が一冊も残っていなかった。そこへ、託された一冊と、補佐が書き継いだ
もう一冊が届く。