あらすじ
母の四十九日法要を終えた夜、恵美子は実家に一泊した。
両親を見送った実家に残るのは、五十を過ぎて独身を貫く弟の圭史一人だけ。
姉弟二人きり、静かに更ける夜。会話の弾まない酒席で、離婚して久しい恵美子が弟の身を案じて口にした言葉が、静寂を破る。
暫くの沈黙の後、圭史がひと言だけ口をきいた。
「……姉さん……覚えてないの?」
その言葉は、恵美子の記憶の奥底にある「何か」に触れ、離れなくなった。
翌朝、恵美子の脳裏に、かつての霧消した夢のように何かが甦りかける。その時、圭史から発せられる重苦しく凍てつく冷気が彼女を襲う。
暴かれる、封印された四十年前の過去の罪。
「覚えてないの?」
その問いから始まる、奪われた初めての回収。
母の法要という静寂の中で繰り広げられる、切なくも背徳的な姉弟の恋愛心理ドラマ。