あらすじ
遠州を巡る過酷な因縁の戦いを終え、平穏な日常へと戻った神林萌歌。県立総合病院の看護師として専門講習に通う道すがら、彼女は街角のブロック塀に立ち尽くす一人の少年と出会う。
擦り切れた絣の着物、すり抜ける小さな手。少年・ヤマナヒロシは、昭和二十年の浜松空襲と艦砲射撃の火の海の中、「家で待っていなさい」という母の言葉を信じ、八十年ものあいだ一人で待ち続けていた。
怨霊を祓う力はあっても、迷える幼子を救う術を知らない萌歌。葛藤する彼女の背中を押したのは、遠く離れた神社の父からの電話、そして友・石破琴音が突き止めた哀しき真実だった。
命を見つめるナースの心と、神職の祈りが重なるとき、時を超えた母子の約束が奇跡を紡ぐ。『最後の仕事』シリーズ、魂の救済を描く珠玉の番外編。