あらすじ
私が選ばなかった人生
灯 希(あかり・のぞみ)。
高校三年生の、ごく普通の少女。
外から見れば、どこにでもいる普通の高校生に見えるかもしれない。
しかし、彼女の日常の裏側には、数え切れないほどの痛みが隠されていた。
幼い頃から、希は父親と母親から身体的にも精神的にも傷つけられてきた。
本来なら、誰よりも安心できるはずの「家」という場所は、いつしか彼女にとって、最も恐ろしい場所へと変わっていた。
誰にも話せない、たくさんの問題を抱えながら、
彼女はそのすべてを自分の中に閉じ込めて生きていた。
そんなある日、担任教師から、卒業まで続く長期課題が生徒たちに課せられる。
それは――
クラスメイトと二人一組になり、
高校最後の一年間、自分たちが日常の中で経験した出来事――
出来事、物語、感情、意見のすべてを題材に、
文学作品や詩を一冊の本として綴っていくというものだった。
そして、希が組むことになった相手は――
伊月 瑠衣(いづき・るい)
彼女がずっと密かに想いを寄せていた、クラスメイトの少年だった。
希から見た瑠衣は、まるで完璧な人間だった。
成績が良く、人付き合いも上手い。
何の悩みも抱えていないように見える少年。
しかし、二人が一冊の本を完成させるために時間を共にする中で、希は少しずつ気づいていく。
――人の目に映っている姿が、その人のすべてとは限らない。
瑠衣の笑顔の裏側にもまた、誰にも語ることのできない傷が隠されていた。
ただの課題のパートナーだった二人は、
やがて知り合いになり、
そして少しずつ、お互いを理解していく存在へと変わっていく。
一枚のページから、次のページへ。
二人は高校最後の一年間を、一冊の本の中に記録していく。
笑った日。
泣いた日。
恋をした日。
傷ついた日。
失敗した日。
そして、自分たちが思っていたほど美しくはなかった、この世界の現実。
やがて、卒業の日が近づいてくる。
その頃には、その一冊の本は、もはや教師に提出するためだけの課題ではなくなっていた。
それは二人が歩んできた――
「自分たちが選ぶことのできなかった人生」の物語。
そして二人は知る。
過去を選び直すことはできない。
それでも――
これからの人生は、自分たち自身で選んでいくことができるのだと。