あらすじ
勇者と魔王。
人間と魔族、それぞれの勢力を率いる二人は、日本各地で長年しのぎを削ってきた宿敵――と、世間では思われている。
そんなある日。
勇者から魔王へ一通のLINEが届いた。
『来月、空いてる?』
実は二人、大学時代の同級生だった。
卒業後、それぞれ勇者と魔王になってからは疎遠になり、気づけば十数年。
三十五歳になった二人は、久しぶりに二人だけで会うことになる。
行き先は、学生時代に金がなくて行けなかった草津温泉。
温泉まんじゅうを食べ、湯畑を歩き、温泉に浸かり、酒を飲む。
話すのは、昔の思い出――だけではない。
言うことを聞かない部下。
無茶を言ってくる上層部。
減らない仕事。
使えない有給。
そして、責任ある立場になったからこその悩み。
勇者も魔王も、三十五歳。
世界を背負うには少し疲れていて、
昔の友人と温泉に行くには、ちょうどいい歳になっていた。
これは勇者と魔王が戦いを繰り広げる物語ではない。
組織に疲れ切った勇者と魔王が、草津温泉へ行く物語である。