あらすじ
前世で男だったフォルカは、ある日気づいた。
ここは、自分が好きだった異能バトルアニメの世界。
そして自分は――原作には存在しない、美少女に転生している。
なら、やることは決まっていた。
せっかく美少女になったんだから、ヒロインムーヴしまくるしかない!
主人公を庇って傷つく。
意味深なことを言って、一人で去る。
何か知っていても「いつか話せる時が来たら」。
無茶をしても「私は大丈夫です」。
そして主人公にだけ、ほんの少し弱いところを見せる。
そんな「謎多きヒロイン」を全力で楽しんでいたフォルカだったが、いつしか戦いは本物になり、仲間達も大切な存在になっていった。
そしてついに、原作最後の敵《厄災》を撃破。
物語は終わった。
それから半年――。
フォルカは決意する。
もうヒロインムーヴはやめよう。
世界は救った。
原作知識も、もう未来には通用しない。
ヒロイックな戦いも十分すぎるほどやった。
これからは主人公達とも距離を置いて、静かな場所に家でも見つけて、のんびり暮らそう。
ただ、それだけだった。
「私はもう、貴方達と行動するつもりはありません」
――俺達を巻き込まないために、一人で行くつもりなのか。
「家を探しているだけです」
――なるほど。ここを拠点にするつもりなんだな。
「今日初めて来た場所です」
――初めてなのに、そこまで分かるのか。
「本当に何も知りません」
――そこまで徹底して隠す理由があるんだな。
「違います」
――そうか。ようやく分かった。
――違う。絶対分かってない。
十数年もヒロインを演じ続けた結果、フォルカの言葉を額面通りに受け取る人間は、もはや誰もいなかった。
本人はヒロインをやめたつもり。
なのに、何も演じなくなった今の方が――
周囲から見ると、どう考えても「何もかも知りながら一人で背負う謎のヒロイン」にしか見えない。
しかも静かに暮らしたいだけなのに、事件まで勝手についてくる。
本人の目の前で盛大に勘違いされ、
本人の知らないところでは、さらに壮大な話へ育っていく。
そして当の本人だけが、
「こいつら全然人の話聞かねぇ……!」
今日もそう思っている。
これは、ヒロインムーヴをやめた元男のTS主人公が、
やめてからの方が盛大にヒロイン扱いされる話。
完全息抜き用作品です。