あらすじ

「僕のことは忘れてくれ。君なら、新しい相手などすぐ見つかる」 夜会の控えの間で、婚約者のレオポルト様はそう言った。腕には男爵令嬢が絡みついている。 私はマティルデ、伯爵家の娘で二十歳。 「承知しました。では、忘れます」 その足で広間へ戻り、王弟殿下にご挨拶した。三年前の初対面から、私の名を一度も間違えなかった方だ。 そこへレオポルト様が追ってきた。 「初めまして。どちら様でしょう?」 「僕だ! レオポルトだ!」 「レオポルト様、初めまして。マティルデと申します」 殿下が笑いをこらえ、祖母が扇の陰で「わたくしも忘れましたわ、そのお家の名」と仰った。 翌週の観劇でも、園遊会でも、侯爵家の晩餐でも。お会いするたび、私は初めましてと申し上げる。忘れてくれ、と仰ったのはあの方だ。 そのうち王都中が真似を始め、男爵令嬢は「どうして彼女に覚えていてほしいの!」と叫び、侯爵夫人は「息子のことなら私も忘れたいわ」と茶を勧めてくださった。 五度目の夜、殿下が言った。 「私のことは、忘れないでくれ」 「殿下のことは、一生忘れません」

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小説を読もう2026/09/08
  • 現在の作品「僕のことは忘れてくれ」と婚約者に言われましたので、お会いするたび初めましてと申し上げます~元婚約者が毎回、自己紹介からやり直しているのですが~